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東京地方裁判所 平成8年(特わ)2481号 判決

本店所在地

東京都足立区東綾瀬一丁目一七番三号

株式会社

荒井工務店

(右代表者代表取締役 荒井好晴)

本籍

茨城県那珂郡緒川村大字千田四三四番地

住居

東京都足立区東綾瀬一丁目一七番三号

会社役員

荒井好晴

昭和八年一一月二一日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人森公任各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社荒井工務店を罰金二四〇〇万円に、

被告人荒井好晴を懲役一年に処する。

被告人荒井好晴に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社荒井工務店(以下「被告会社」という)は、東京都足立区東綾瀬一丁目一七番三号に本店を置き、建築請負業等を目的とする資本金五〇〇〇万円(平成四年一二月七日以前は三二〇〇万円)の株式会社であり、被告人荒井好晴(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、外注費を二重に計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成三年九月一日から平成四年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億二五四四万三〇七四円(別紙1の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成四年一〇月二九日、東京都足立区綾瀬四丁目一四番一〇号所在の所轄足立税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億九五一八万六五三一円で、これに対する法人税額が七二〇四万七二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第一六二三号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億二〇八九万三六〇〇円と右申告税額との差額四八八四万六四〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成四年九月一日から平成五年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億二九〇五万九三三六円(別紙2の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成五年一〇月二五日、前記足立税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一七六四万七一〇八円で、これに対する法人税額が四三〇六万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額八四八四万四八〇〇円と右申告税額との差額四一七七万九五〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成五年九月一日から平成六年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六九二三万八〇九三円(別紙3の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成六年一〇月二六日、東京都足立区千住旭町四番二一号所在の所轄足立税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二五二九万七二七二円で、これに対する法人税額が八五八万六六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二五〇六万四五〇〇円と右申告税額との差額一六四七万七九〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  荒井洋子、森若隆彦及び尾形和廣の検察官に対する各供述調書

一  登山正夫の大蔵事務官に対する平成七年三月二日付け質問てん末書

一  大蔵事務官作成の材料仕入高調査書、福利厚生費調査書、外注費調査書、通信費調査書、交際接待費調査書、減価償却費調査書、家賃地代調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、雑収入原価調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費等損金不算入額調査書、事業税認定損調査書、証明書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の事業税認定損計算及び税務署の所在地に関する各捜査報告書

一  登記官作成の登記簿謄本

判示第一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押弟一六二三号の1)

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  登山正夫の大蔵事務官に対する平成七年一〇月六日付け質問てん末書

一  大蔵事務官作成の期末材料棚卸高調査書、給料手当調査書及び支払手数料調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

* 以下の「刑法」は、いずれも、平成七年法律第九一号附則二条一項本文により、同法による改正前のものを指す。

被告会社の判示各事実は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金二四〇〇万円に処し、被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、建築請負業等を目的とする被告会社の社長である被告人が、外注費の二重計上・水増し計上、材料仕入高の過大計上等の方法により、三事業年度にわたり、合計一億〇七一〇万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率は平均四六・四パーセントである。このような本件の脱税額、ほ脱率、犯行態様のほか、犯行の動機、被告人の反省状況(一〇〇万円を法律扶助協会に贖罪寄付している)、被告会社の納税状況(附帯税を含め完納済み)を綜合考慮し、被告人に対しては刑の執行を猶予し、被告会社に対しては主文の罰金刑を科するのが相当であると判断した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金三〇〇〇万円、被告人・懲役一年)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙4

ほ脱税額計算書

株式会社 荒井工務店

〈省略〉

株式会社 荒井工務店

〈省略〉

株式会社 荒井工務店

〈省略〉

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